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The Slave Ship [読書日記]


もうそろそろ終盤というところ、興味深く読んでいます『奴隷船の歴史』。
実を言うと奴隷貿易といってもよく知らなくて、野蛮な白人が銃と大砲でアフリカの人たちを脅し、謀略をつくして無理やり船に乗せて新大陸に運んだかのような印象を持っていました。

でもそうじゃなくて、まあ、そういうことが全くなかったといえるかどうかは知りませんが、たいていの場合、奴隷となるアフリカの人々は、現地の有力者、現地の商人との交渉によって入手したと書かれています。地域の紛争での捕虜や囚人、罪人、略奪などで誘拐された人々が奴隷となります。主にイギリスやアメリカの船によって、15世紀から19世紀の初頭にかけて、数百万人のアフリカの人が新世界に奴隷として売られていったそうですが、なんという人的資源の浪費、流出だろうかと思います。文明と国家の規範を考えさせられます。日本は鎖国から解かれたとき、かろうじて国家としてまとまることを選ぶことができ、ほんとうに幸運でした。

ところで、たんに不明なので問いたいと思い、書いておきますが、


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僕は、《アフリカ》の憐れな男たちに出会って自分が感じたことを、言い表す術をしらない。人数は7人ーー全員が若く、22、3歳、屈強な男たちだーー皆が水夫だった。彼らほど素晴らしい男たちを見たことはないーー幾人かは死ぬ定めなのだと考えたときの僕の感情は、きっと誰も表現できないだろう。今どんなに元気盛んでも、2度と故郷を見ることができないなんて。また、このように高貴な男たちが命を落とせば、英国旗の栄光がどれほど翳ることだろう、とも考えた。力強く、たくましく、そして度胸もよく、またやる気もある、こんな男たちのおかげで、僕らは、敵国、フランスの海軍をものともせずにやっていけるのだ。

「国の柱たち」との出会いで呼び起こされた、いくばくかの同性愛的エロティシズム、そして愛国的な感情でもって、クラークソンはこの後、水夫と彼らの経験を奴隷貿易廃止運動の中心に据えるようになった。証拠と情報を集め、また奴隷船の下甲板を照らし出す光を求め、彼はますます水夫たちを頼りにするようになっていったのである。

『奴隷船の歴史』294P
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○太字の部分、水夫が素晴らしいと褒めただけでなぜ「同性愛的エロティシズム」と形容されるのか。


冒頭、1つ目の段落は、奴隷貿易廃止を唱えたトーマス・クラークソンからの引用。18世紀から19世紀のイギリス人です。
2つ目の段落は地の文、現代の作者のマーカス・レディカー。


水夫や軍隊にそういう傾向はつきものかもしれませんが、本書ではその部分にこれまで全く触れられてきませんでした。そしてここに「同性愛的」と書かれたのが初めて。なので驚きましたよわたくしは。若くて逞しい水夫を褒めたくらいで同性愛的エロティシズムと形容するのはどうでしょう?実際に私が読んでいて、クラークソンの文章から全くそういう感じがしなかったのだけど、みなさんはどうですか?
そういう風に書かれることの原因として考えられるのは、私が思うに、この本には今までのところ一切書かれていないけれど、トマス・クラークソンが実際に同性愛的傾向が顕著だったのか、奴隷貿易反対運動の間にそういう嫌疑をかけられたのか、もしくは他の人が、あの文章を読んでそういう風に感じたか、です。

トーマス・クラークソン

↑日本語のwikiの記述は少ないですが、↓英語だとたんまり書いてあります(めんどくさいので全部は読んでいません)

Thomas Clarkson

英語版をざらっと読めば、妻がいたと書かれています。独身者でもない。敵対者からホモセクシュアルを糾弾されていた様子もない。まあ、wikiじゃなくてもっと詳細な研究書にそういうことが書かれていたかもしれないことは否定できませんね。それをレディカーが読んで、クラークソンの人となりにそのことをほのめかすのが公平だと考えて書き添えたのかも。それにしてもいらないだろ。これ。と思ってしまいます。


こういう種類の著作においては、筆者の価値観は出来るだけ表面化されないよう、細心の注意をはらってもらわなければ。信頼性を損なうというものです。



















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